2014年9月5日金曜日


先週の説教要旨「 信徒伝道者の先駆者 」使徒言行録18章18節~28節 

 11月の伝道礼拝でお呼びする加藤常昭先生のお連れ合い、さゆり先生が昨日、天に召されました。さゆり先生は賛美歌280番を愛唱されていました。「 この世の のぞみの きえゆくときにも こころは うごかじ みちかい たのめば 」という歌詞です。また、伝道者となった後輩たちに「 困難に出会ったときも、必ず、主が助け手を送ってくださるから 」といって励ましておられました。その言葉は経験に裏打ちされた確信に満ちた励ましの言葉でした。神は確かに、困難に出会ったときも「 必ず、主が助け手を送ってくださる 」方です。使徒言行録第18章には、神がパウロの助け手として送ってくださったアクラとプリスキラという夫婦の働きが記されている。アクラとプリスキラ、この2人の信徒夫婦の存在がなかったならば、コリントでの伝道、そしてエフェソでのパウロの伝道はままならなかったのである。先週の礼拝で見たように、パウロがコリントにやって来たときは、ひどく落胆し、恐れと不安を抱いていた。その前に行った町、アテネでの伝道がうまく行かなかったからである。重い足取りでコリントにやって来て、まさに困難に遭い、助け手を必要としているときに、神が送ってくださったアキラとプリスキラに出会うのだ。実は、彼らは住んでいたローマから退去を命じられ、最近になってコリントへとやって来ていた。彼らもまた落胆して、コリントにやって来ていたのだ。彼らはすでにキリスト者になり、ローマに住んでいたが、他の地域同様に、ユダヤ人がキリスト者のことで騒ぎを起こしたらしい。それでローマの皇帝は、騒ぎを起こすようなら、ここから出て行けとユダヤ人に退去命令を出したのである。当時の世界の中心ローマに住んでいた2人は、そこでキリストの福音を伝えようと考えていたが、その思いにストップをかけられたのである。パウロ同様、この2人も意気消沈してコリントにたどりついた。しかし神様は、そういう落胆の経験の先に必ず、新しい道を用意していてくださる方であるね。パウロにとっても、アキラとプリスキラにとっても、コリントにまたとない出会いの機会を神様は用意されていたのだ。まさに「 主の山に備えあり 」である。

パウロとアキラ夫妻の職業は同じ、テント造りであった。仕事も同じ、信仰も同じ、彼らは出会ってすぐさま意気投合し、一緒の家に住むようになった。パウロはそこを拠点にしてコリントでの伝道を展開した。アキラ夫妻との出会いは、パウロにとって思わぬ協力者の出現であり、またとないパートナーを手に入れたことになる。どのような伝道を始める場合でも、決定的な意味を持つのは、誰とどのように出会うかということである。神様は出会いを通して、御業を進められる。私たち成瀬教会の歴史から言えば、ここに教会を建てようと移り住んで来られた吉崎忠雄牧師夫妻と、東京から転居し、ここに住み始めて間もない中市さんご夫妻が出会った。そのことが成瀬教会のその後の歩みにおいて大きな意味をもったのだった。パウロは大変、力のある伝道者だった。しかし力のあるパウロをもってしても、彼一人の力では伝道できないのだ。パウロと共に働く信徒の存在、助け手がパウロにも必要だった。その助け手となる人を神は送ってくださったのである。

パウロはコリントを後にして、エフェソを経て伝道旅行の出発点であるアンティオケアに戻る。途中、同行していたアキラとプリスキラをエフェソに残す。もし神の御心ならば、もう一度エフェソに戻って伝道を展開しよう。そのときの下準備をする者として、2人をエフェソに残したのであろう。パウロはアンティオケを発ち、再び伝道の旅に出る(23節)。23節は、第第2次伝道旅行の終わり、そして第3次伝道旅行の始まりを告げている箇所である。その第3次伝道旅行の中心は、エフェソである。ついでのことのようだが、18節ではアキラとプリスキラの名前の順番が入れ替わり、婦人のプリスキラの方が先に来ている。時々、私たちの教会でもご婦人の方が教会ではよく知られていて、旦那さんのことを「 だれそれさんのご主人 」と呼ぶことがある。そういう夫婦であったのかも知れない。奥さんがバリバリと前面に出て働いて、旦那さんは後方でそれをバックアップして働く。それもまた楽しい。そういう2人がパウロ到着までの間、下準備を進めている中で、ある出来事が起きた。アポロという伝道者が訪れたのである。彼は後にコリント教会に大きな影響を及ぼす伝道者となる。2人はアポロの説教を聴き、雄弁で聖書の知識も豊かであったけれども、正確でない部分を感じ取り、アポロがより正確に神の救いの道を説教できるように教えた。伝道者に信徒の立場で聖書を教えるのは勇気が必要だったであろう。しかし、本当に神様のためになることをしたいと彼らは考えていた。こういう信徒の存在がパウロを支え、アポロという有能な伝道者の成長に関わったのである。私はいろいろな教会に必ず、アキラとプリスキラのような信徒さんがおられることを知っている。どこの教会に行っても、そういう人たちと出会える。それは伝道者のひとつの喜びである。あそこにも、ここにも、アキラ、プリスキラと呼びたい人がいる。この成瀬教会にもたくさんのアキラ、プリスキラがいる。礼拝で御言葉に聴き、奉仕と献げ物をもって、伝道者を支える皆さんはまさに、アキラとプリスキラ。神が助け手として送られた方々である。(2014年8月24日)